概要
技適マークとは、電波法令で定めている技術基準に適合している無線機であることを証明するマークです。
現在の技適マーク(H7.4~) 旧タイプの技適マーク(S62.10~)
証明が必要な無線機には、個々にこのマークの表示を義務付けられています。(旧タイプの技適マークも有効です)
技術基準に適合していない無線機を使用した場合は、悪質なノイズを発生させ近隣の無線機や電気製品、ひどい場合には人体にも悪影響を及ぼす可能性があります。
人体についての影響に関しては総務省のページを参照して下さい。
電波の人体に対する影響について(2018/03/29参照)
通常、皆さんが無線機を使用する場合には、無線局の免許を受ける必要があります。
しかし、このマークが付いていれば、一般的な家庭で使用する無線機が装備されたPCやタブレット、スマートフォン、携帯電話、コードレス電話、無線ルーター、電子レンジなどは、無線局の免許なしで使用することができるようになります。(特定無線設備)
言わば、免許手続きの特例を受けるための識別表示制度と言えます。
なお、技適マークが付いていてもアマチュア無線やパーソナル無線などのように、無線局開設の為に総務大臣の免許を受ける必要がある無線機も存在するため注意が必要です。
詳しくは、総務省のページを参照して下さい。
無線機器基準認証制度について(2018/03/29参照)
特定無線設備等一覧(2018/03/29参照)
技適証明ラベルの記載項目
通常、技適マークは、無線機本体の裏やバッテリーケースの中、基盤、ソフトウェア内などに表示されています。
技適証明の表示ラベルには、マークと一緒に次の項目も記載するように規定されています。
- 認証の種類を表す記号:技術基準適合証明と技術基準適合認定の何れか、あるいは両方を証明する記号。
- 技術基準適合証明: R
- 技術基準適合認定: A or T
- 番号:技術基準適合証明番号 or 工事設計認証番号 or 技術基準適合自己確認の届出番号
その他、表示サイズなども既定されています。
偽装などの不正な表示は違法になりますので、見かけた場合は通報して下さい。
技適マークの表示例
タブレット(本体裏)
USB無線マウス(電池ボックス内)
Raspberry Pi Zero W(基盤裏)
Bluetoothイヤホン(本体裏)
GPSナビ eTrex Touch 35J(ソフトウェア内)
購入前に確認する方法
皆さんがネットショップ等で購入しようとしている製品(無線機)が、技適マークを取得している製品であるか確認するにはどうすればよいでしょうか。
確認方法としては、次のような方法が考えられます。
- 製造メーカーや販売店に直接問い合わせる
- 総務省の電波利用ホームページで検索する
ここでは、2の検索システムについて説明します。検索サイトは以下となります。
技術基準適合証明等を受けた機器の検索(2018/03/29に参照)
なお、2018年03月29日時点で上記システムで検索できるデータは次のようになっています。最新の無線機を検索する場合はデータベースが未更新であることも考慮して下さい。
検索対象データ日付:平成29年12月15日現在
データ更新日:平成30年3月20日
※検索対象データの更新は、概ね1ヵ月毎
検索システムのお知らせ(2018/03/29に参照)
検索方法は、次のようになります。
画像に記した赤枠内の何れか1つまたは複数項目に入力することで検索できます。
氏名又は名称 |
申請者の氏名や企業名(メーカ名)など
|
番号 |
技術基準適合証明番号、工事設計認証番号、技術基準適合自己確認の届出番号など
|
型式又は名称 |
無線機の型番や商品名など
|
検索例
以下に、実在の製品で検索を行ってみた例を示します。
検索を行う製品は、amazonで実際に購入した「Ewin mini bluetooth キーボード」です。
製品の型番は、amazonの販売ページに「EW-RB12」であることが記載されています。
また、「電波法認証済正規品」であることもPRとして記載されています。
今回は型番が分かっているので次の画像のように入力し、「送信」ボタンをクリックして下さい。
見つかった場合は、次の画像のように検索結果が表示されます。
技術基準適合証明の種類はたくさんあるように見えますが、大きく分類すると次のようになります。
技術基準適合証明 |
個々の無線機毎に証明し、1台毎に異なる証明番号が付与される。
|
工事設計認証 |
無線機の型式毎に証明し、型式毎に異なる認証番号が付与される。
|
また上記証明書は、各々次のような証明機関などが審査を行い認定されます。
登録証明機関 |
第三者の立場による審査制度
|
承認証明機関 |
第三者の立場による審査制度
|
相互承認(MRA) |
第三者の立場による審査制度
MRA(Mutual Recognition Agreement)は、相手国(欧州等の外国)向けの機器認証を自国(日本)で実施することを可能とする二国間の協定。
|
技術基準適合自己確認 |
自己責任に基づき自ら確認する制度
|
上記どの制度で認定されても法的なメリットは区別なく同じです。
なお、技術基準適合自己確認制度の場合は、届け出の必要性や、利用できる対象機器が規定されているようです。
電気通信機器基準認証マニュアル(2018/03/29に参照)
第7章 新しい基準認証に関するFAQ(2018/03/29に参照)
検索結果から分かったのですが、製造を行ったのは「Shenzhen Ouxialai Trading Limited Company」という中国の深セン市にあるメーカーのようです。
日本では、知名度の低いマイナーなメーカーのようですが、このようにモラルのあるメーカーは真面目に取得しています。
実際、製品自体は良くできていて気に入っています。耐久性に関しては未だわかりません。なお、本体に付属しているBluetoothのUSBドングルに関しては、技適マークの取得を行っていないようですので、使用は控えたほうが良いです。
また、同じメーカーでもUSB無線タイプの同様な機器に関しては、技適マークの取得を行っていないようですので注意して下さい。
amazonで確認
違反するとどうなる?
技適マークが付いていない無線機を使用した場合は、どうなるのでしょうか。
使用者となる皆さんが最も気になるのは、このような疑問ではないでしょうか。
結論から言えば、通常は電波法違反になります。
電波法違反は犯罪ですので、以下のような懲役や罰金が科せられます。
不法無線局の罰則 |
1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象となります。
|
重複無線通信妨害 |
公共性の高い無線局に妨害を与えた場合は、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金の対象となります。
|
違反関係者 |
法人の場合は、違反行為者および法人各々に対して罰金刑が科せられます。
|
電波法抜粋(2018/03/29に参照)
では、違反にならないのはどのような場合でしょうか。それは、つぎのような場合と定義されています。
- 発射する電波が著しく微弱な無線局で総務省令で定めるもの(「微弱無線適合マーク」が必要)
- 市民ラジオの無線局(26.9メガヘルツから27.2メガヘルツまでの周波数の電波を使用し、かつ、空中線電力が0.5ワット以下である無線局のうち総務省令で定めるものであって、第38条の2第1項の技術基準適合証明を受けた無線設備のみを使用するものをいう。)
- 小電力の特定の用途に使用する無線局
免許及び登録を要しない無線局
皆さんが普段利用する多くの無線機は2.4GHz帯の周波数帯を採用していますので注意して下さい。
(無線LANやBluetoothを装備したPCやスマートフォン、USB無線を装備したマウスやキーボード、電子レンジなど家庭や企業内の多くの無線機(家電)は2.4GHzを利用しています。)
なお、テレビやエアコン等の「赤外線」リモコン、カメラの撮影で利用される複数台のストロボでシンクロさせる光通信等に関しては、通常、技適マークは不要です。(電波通信方式は技適マークが必要)
総務省が管理する電波(電波法)は、「300万MHz(3THz)以下」の周波数の電磁波と規定しています。300万MHzを超える赤外線や紫外線、X線などは電波法の対象外ということになります。
電波とはどういうものですか?(2018/03/30に参照)
総務省における不法無線局対策の取り組み状況
2018年03月26日時点で総務省が公開している主な取り締まり状況は次のようになっています。
不法無線局の取締り状況
平成28年度は168件の告発を行っています。
販売業者の免許情報告知義務の取締まり状況
平成28年度は、全国で155店舗の調査を行い、19店舗に対して義務不履行の指導を行っています。
不法無線局対策の取り組み(2018/03/29に参照)
上記の取締り状況から、現時点ではネットショップに対する取り締まりは行っていないように思えます。
しかし、今後は間違いなく取締りの対象になることが予想できます。ブログやネットショップでの商品使用レビューも当然チェックされていると思いますので、知識が無いまま投稿されている方はお気を付けください。
総務省が本気で取締りを開始すれば、販売業者と違法使用者を一網打尽にできてしまうこともネット社会の構造であることを十分に理解しておく必要があるでしょう。
なお、今のところ製造及び販売することは違法(免許情報報告義務は有る)ではなく、使用することが違法行為になります。製造及び販売業者はそのことを理解して販売していると考えてください。
「日本人はチョロいな!」と思われないように、十分にご注意下さい。(悪質と判断された場合は製造及び販売者に関しても逮捕はあります。)
まとめ
通常皆さんが一般的に利用している多くの無線機は、技適マークが必要になります。
アマゾンなどのネットショップには、海外などのマイナーなメーカーが出品している安価な無線機が非常に多く販売されています。くれぐれも安いから、またはレビューの評価が良いという理由だけで購入するのは止めましょう。マイナーなメーカーであってもモラルのあるメーカーは、技適マークの取得を行っていますので確認する習慣をつけましょう。
それから、技適マーク表示に違反している商品に対して使用レビューを書くこと自体が、「私は違法行為をしています。」と自ら公表していることになります。
無知な消費者があまりに多い状況ですが、電波の違法行為を理解できた方は知人に教えてあげて下さい。
現状では総務省もそれほど厳しく取り締まってはいないようですが、ここ数年でIoTの普及により無線機が急激に増加している状況は想像できると思います。
IoTの普及により無線機の多くはインターネットに接続されます。そうなると使用している無線機情報がこっそり送信されたり、「ネットショップで違法行為のレビューがすごい数になっているが総務省は何の対策もしないのか!」などの通報があるかも。そしてある日突然警察や総務省関連から連絡が・・・と近い未来にそのようになるかもしれませんよ。
世の中には様々な人が存在するので違法行為は止めましょう。